「共同保育について」

 こんにちは。すももクラスの息子(2歳)の父です。今回のテーマは「共同保育」です。まごめの保育の特徴や意義についてこれまでのブログで紹介されていますので、私からは違う視点で共同保育について書いてみたいと思います。

  そもそもなぜ「保育」が必要なのでしょうか。哺乳類の中で長い期間子育てをする動物は多くはありません。生き物の生存戦略には、子供を多く産み、確率的に子供を生存させるという戦略があります。もう一つは生物間の競争の中で確実に子供を育てる戦略があります。人間は森や草原の中ではライオンのような屈強な動物ではなく、二足歩行により脳を拡大させ、集団の中で社会性を身に付けるという生存戦略を築いた生き物です。そのため、子供の成長を早めるよりも、むしろ社会脳を成長させるために、子育て期間を延ばすという戦略を採用したのです。つまり人間は「保育」や「教育」が必要な生き物なのです。人間社会には保育のために2つのシステムがあります、1つは「家族」です。もう一つは「共同体」と呼ばれる家族以外の集団です。人間は昔から自分の家族だけではなく、複数の家族集団=共同体によって保育を行なってきました。「家族」は見返りなしの奉仕の関係、「共同体」は互酬性の関係で成り立っています。人間と近い哺乳類であるゴリラは家族システムだけ、チンパンジーは共同体システムしか持たないそうです。人間は家族と共同体が重層したシステムで社会を形成する生き物なのです。

 では、現代の保育はどうでしょうか。家で子供の世話をするのは家族、保育園で子供を見るのは保育者です。確かに子供は家族と保育者(家族以外のメンバー)で保育されます。しかしこれは労働時間で切断された別々の並列状態(重層構造ではない)だといえます。賃労働のシステムが社会基盤になっているからです。しかし旧石器時代時代から続く人類の保育は、家族と共同体の重層した状態の中で行われていました。それが長い歴史の中で持続してきたシステムです。「共同保育」は複数の家族が、保育に参加することにより、家族と共同体(保育者や他の家族)の重層化する方法の一つと言えます。近代以前の村落共同体みたいです。しかしこのシステムは効率性に欠けた「昭和的」だと考える方もいるかもしれませんが、「共同」は今日とても注目を集めています。

 

「コモンズ」という言葉をご存知でしょうか。最近よく耳にするようになりました。日本語では「入会地」あるいは「共有地」を意味します。共同で所有・管理される土地あるいは仕組みのことを指します。このコモン(共)と対比して用いられるのが、プライベート(私)とパブリック(公)です。わかりやすくするために土地所有についての例を挙げます。道路は公(国や都道府県など)が管理します。私有地は個人の所有者が管理します。他方、コモンズは村落共同体が共有管理する放牧地や溜池などを指します。近代社会では所有権を明確化するために、誰のものか特定できない共有地は公と私に分配され、コモンズは消滅していきました。この方針を理論的に支えたのが、生物学者のG・ハーディンが提唱した「コモンズの悲劇」でした。誰のものでもない共有地では、多数の人によって資源が乱獲されて資源の枯渇を招くか、誰かに資源が独占されてしまうというストーリーです。しかし近年、ノーベル賞を受賞した経済学者E・オストロムが「コモンズの悲劇」に反論しました。ハーディンが想定したコモンズは誰でも参入できるオープンアクセスの仕組みの場合のみを想定しており、実際に機能しているコモンズは、コミュニティのメンバーにアクセスが限られ、共同体のルールや境界があり、資源を独占し、収奪する人が参入できない仕組みでした。実際、行政などの公的なサービスは非効率的で柔軟性に欠け、市場原理による私的なサービスは経済優先で排除性が高く、最適な資源分配ができないと指摘されています。それに対し、コモンズは中長期的に見れば、共同体の資源を効率的に管理できることをオストロムが証明しました。「共同保育」もコモンズの一形態です。まごめの「共同保育」の資源は子どもたちの家族や保育者の労働・知識・スキル・愛着・信頼などです。子供も親も保育者も、ユニークな個性が集まって協力し合い、みんなが充実感を得られる保育の仕組みが共同保育なのです。

参考文献

山極壽一, 『家族進化論』, 東京大学出版会, 2012

三俣学, 『エコロジーとコモンズ』, 晃洋書房, 2014

2023サマーキャンプ






■入園説明会について

日時:2023年11月11日(土) 10:00~11:30(開場:9:50)

場所:まごめ共同保育所 (大田区西馬込1-18-13)

申込方法:お電話にて受付けます。( 水曜日を除く平日14時~16時 にお電話ください。 )受付時間内にお電話が難しい方は飛び込み参加も可能です。

事前予約特典:おもちゃやお菓子などご用意しております。

電話番号: まごめ共同保育所(03-3771-1969)



■ 保育見学について

施設内の見学は、随時受け付けております。
ご希望の方はお電話ください

まごめ共同保育所(03-3771-1969)

・保育見学の日程

月・火・木・金いずれか

9:45より30分から1時間程度です

 まずは子供たちの過ごし方を間近で見て、まごめの保育を肌で感じてください!